規制緩和や経済活動の再開…中国で新型コロナウイルス(COVID-19)感染の第二波が来る!という研究結果

規制緩和や経済活動の再開...中国で新型コロナウイルス(COVID-19)感染の第二波が来る!という研究結果

赤羽(Akabane)

今回は「新型コロナの第二波が再び中国にやってくる…?」というお話です。

規制緩和や経済活動の再開…中国で新型コロナウイルス(COVID-19)感染の第二波が来るかもしれない

2019年12月末、中国の武漢で初の感染者が出てから瞬く間に世界中へと感染が拡大した「新型コロナウイルス(COVID-19)」

中国では早々に強行策が講じられたことが功を奏して、感染の抑え込みに成功しています。2020年3月時点で、既に感染者数や死亡者数もアメリカやイタリア、スペインなどが中国を上回るという結果にもなっていますね。

そして2020年3月下旬には、感染の中心地だった中国・湖北省で規制緩和に踏み切る方針が表明されたようです。

中国最大の感染多発地区だった湖北省でも省政府が24日、1月23日から実施していた武漢市の封鎖措置を4月8日に解除すると発表した。武漢市以外の都市は3月25日に封鎖を解除するという。(#1)

しかしここにきて、感染の第二波が来るんじゃないか?という懸念の声が上がっています。この記事では、上記テーマについて参考になるデータを見ていきます。

権威ある医学雑誌『Lancet(ランセット)』掲載のモデル化研究

2020年4月上旬に医学雑誌『Lancet(ランセット)』に掲載された研究(#2)によると、規制緩和や経済活動の再開によって、抑え込まれていた感染の第二波が来るかもしれないし、次は前より抑え込みに苦戦するかもだ!とのことでした。

この研究は、中国で特にCOVID-19感染が拡大した十数の都市におけるCOVID-19の基本再生産数(R0)と、全31省のCOVID感染による致死率を分析したもので、上記で紹介した中国の規制緩和によるこれら数値への影響についても調べてくれています。

基本再生産数(R0)は「R0 = 〇〇」で表される、ウイルスの感染力に関する数値です。例えば、R0 = 2.5の場合、そのウイルスは1人の感染者から新しく2.5人に伝染する程の感染力を持っているということを意味します。

では以上を踏まえて、まず分析の結果を見てみましょう。

結果
  • 2020年1月23日から強行された厳しい規制措置によって、中国国内におけるCOVID-19の基本再生産数は1ヵ月程で「R0 < 1」まで低下している
  • 湖北省を除く都市におけるCOVID-19感染による致死率は0·98% (0·82–1·16)で、湖北省における致死率は5·91% (5·73–6·09)だった(= 湖北省内はその他都市よりも約6倍の致死率)
  • 北京、上海、深圳、温州の4つの大都市を調べると、COVID-19の感染拡大は大半が1月下旬の湖北省からの移動によるものだった
  • 2020年2月下旬から徐々に再開されている経済活動や規制の緩和によって、再び基本再生産数が「R0 > 1」まで増加してしまう恐れがある
  • もし感染の第二波が来てしまえば、そこから「R0 < 1」の状態まで戻すのにより一層の期間が必要になる
規制緩和や経済活動の再開...中国で新型コロナウイルス(COVID-19)感染の第二波が来る!という研究結果

(#2)より引用。上図は2020年1月下旬~2月下旬までの一か月間の感染者数推移。下図は中国全土で都市封鎖が施行された都市の分布で、赤が完全な都市封鎖(ロックダウン)、ピンクが準ロックダウン、こげ茶が戦時措置。

ここから言えることは、まず中国による早期の強硬手段はウイルスの感染力を確実に抑え込んでいたということ。「R0

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • 基本再生産数(R0)は正式に報告されたデータに基づいて算出している:他にも未確認のデータや、報告されていないケースも含めると結果が変わってくるかもしれない
  • 具体的にどんな規制緩和がどのくらいの影響力を持つか?は分からない
  • 基本再生産数(R0)の算出に使用した情報の出どころが偏っている:感染経路まで公式に特定されているデータの半分近くが深圳の調査データだった

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • COVID-19の感染拡大がが最初に起こった中国では、1月下旬に強行された都市封鎖などの施策によって、ウイルスの感染力をかなり抑えこまれていた
  • しかし2月下旬から徐々に規制緩和が講じられていて、緩和のペースによっては今後再びCOVID-19の感染拡大が起こる恐れがある
  • しかも再び感染拡大が起これば、今度は抑えこみに以前よりも長期間がかかり、もっと多くの努力を要するかもしれない

赤羽(Akabane)

感染者数もかなり抑えこまれていて「中国はもう大丈夫だ!」みたいな空気にすっかり変わっている気がしますが、規制緩和のタイミングやペースこそが最も重要な局面だ!というお話でした。

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参考文献&引用

#1 BBC News Japan『「空気が新鮮」 規制緩和で数カ月ぶりに外出、中国・北京の人々』2020年4月15日アクセス。

#2 Kathy Leung, Joseph T Wu, Di Liu, Gabriel M Leung. First-wave COVID-19 transmissibility and severity in China outside Hubei after control measures, and second-wave scenario planning: a modelling impact assessment. The Lancet, April 08, 2020.