赤羽(Akabane)
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スマートフォンのアプリだけでメンタルヘルスはどこまで改善するのか?
ということでこの記事では、スマートフォンの専用アプリでメンタルの疾患にどこまで効果があるのか?まとまった見解を見ていきましょう。
スタンドアロン版のスマホアプリによるメンタルヘルス改善効果をまとめたメタ分析によると..
2019年にフリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルクが発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)によると、こうしたスマホアプリの効果は一部に限定されてしまうようです。
この研究では19件のRCTから3681名を対象に、以下のようなメンタルの問題にアプローチしています。
ちなみにアプリは冒頭でも触れた認知行動療法をテーマにしたものが8件、その他はマインドフルネスをベースにしたものが幾つかある感じです。
各研究では参加者を①何らかの専用アプリを使って治療するグループ、②期間中何もしないor効果がない別のことをやるグループ、の2つに分けて比較検証していきました。
そして実験前後で各自のメンタルヘルスにどんな変化があったのか?をそれぞれ診断ツールを使ってみていったところ、こんな結果になったようです。
- うつ病とたばこへの依存でのみ中くらいの治療効果があった(うつ病: g = 0.33, 95%CI 0.10–0.57, P = 0.005, たばこ: g = 0.39, 95%CI 0.21–0.57, P ≤ 0.001)
- 不安や自傷&自殺願望、アルコール依存へは有意な効果が見られなかった
- PTSDと睡眠の問題は件数が少なくて分析は出来なかったが、睡眠の問題に対しては中~大の効果が出た実験が1件あった
どうやら全体でみるとスマホアプリの効果はかなり限定的だということになりました。これはオンラインでの治療の効果と比較するとちょっと低めですね。
どうして上記2つだけ効果が見られたのかは分かりませんが、実験の数や質、内容が大きく関係していそうな感じがします。また全体的にオンラインの治療よりも効果が低いことについては、おそらく医師や専門家のガイダンスがないからでは?と考えられています。オンラインならこうした指導を受けつつ治療を勧められるんですが、スマホアプリだと画面上の指示に従うしかありません。
注意点・まとめ
まとめると、スマートフォンのアプリのみでメンタルヘルスの治療効果は一部限定的に見られました。
ただし中には実験数が2件しかなくて分析がまともにできなかったものもあるので、その辺りの結果はもう少しデータが出てから見極めたほうが良さそうですね。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 近年では認知行動療法などメンタル治療が一部オンライン化、さらにはスマホアプリへの移行が進んでいる
- スマホアプリ完結の治療法では、うつ病やたばこ依存など限定的な効果しか確認されなかった
- ただエビデンスが少ない部門もあるので、結論はデータがもう少し出るのを待った方がよさそう
こんな感じでしょうか。現段階ではあまりパッとしない結果でしたが、今後実験が増えてくるにつれてハッキリと判断が下せるかと思います。
赤羽(Akabane)
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#1 Kiona K. Weisel, et al. Standalone smartphone apps for mental health—a systematic review and meta-analysis. NPJ Digit Med. 2019 Dec 2;2:118.