赤羽(Akabane)
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砂糖の摂りすぎで精神障害のリスクが高くなる?!
2017年に『Nature』誌のサイエンティフィックレポートに掲載された研究(#1)によると、甘いものや飲み物から砂糖を摂取する量がもっとも多い人々(ここでは男性のみだった)は5年後に精神障害にかかるリスクが23%も高まると報告されています。
イギリスの大規模な調査データを使った長期の研究結果によると..
これは、ホワイトホール調査実験というイギリスの大規模な調査データを使った研究で、大規模かつ長期間の研究が可能となっています。概要は以下の通りです。
- 参加者は計23245人で39~83歳
- 女性が比較的少なめ(1段階目は10308人、男性:67%、女性:33%でスタート)
- 1985年~2013年の期間で観察、段階は11に分けられてアンケートや診察などの介入がある
- この期間で参加者は移り変わる(病気でドロップアウト、など)
- アンケート内容は甘いものの摂取や食事や運動の習慣、診察は精神疾患やBMI、お腹周りなど
イギリスのみの研究ですし、観察研究なので科学的な信頼性は微妙なところですが、サンプル数が多くて調査期間が30年もある点は強いですね。結果は次のようになりました。
- 砂糖を一番摂っていた人々の間で5年後のうつ症状の再発リスクが高まった
- 砂糖を一番摂っていた男性の間で精神障害にかかるリスクが高まった
- 精神障害やうつ症状が甘いものの過剰摂取を引き起こしているわけではなかった
- 砂糖を一番摂っていた人々が何故か一番標準体型が多く、肥満の傾向が少なかった
まず大きなポイントは、因果関係が明らかになりそうである点ですね。確かに甘いものをたくさんとっている人の間で精神疾患が多いという研究結果は他にもあったのですが、あくまで相関関係を示しただけでした。ですがこの研究では、「精神障害やうつ症状があるから甘いものをたくさん食べるようになってしまう」可能性が否定されました。つまり、「砂糖を摂りすぎるから精神障害やうつ症状になるリスクが上がる」可能性のほうが高いということですね。
二番目の項目「砂糖を一番摂っていた男性の間で精神障害にかかるリスクが高まった」は冒頭で紹介したように、女性の参加者の割合が少ないから効果が弱まったと考えられています。
最後の「砂糖を一番摂っていた人々が何故か一番標準体型が多く、肥満の傾向が少なかった」は原因は分かっておらずエラーの可能性もある!と研究チームは捉えているようです。いかんせん、参加者の食事の習慣を完全に把握できるわけではありませんし、砂糖以外の栄養素が関係している可能性ももちろんあるので、「砂糖のせいで精神障害になるんだ!」と言い切ることはできません。今後は性別や人種をもっと正確に整理していて、参加者の食事の内容をより細かく特定できる研究に期待したいところです。
赤羽(Akabane)
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#1 Anika Knüppel,Martin J. Shipley,Clare H. Llewellyn,Eric J. Brunner”Sugar intake from sweet food and beverages, common mental disorder and depression:prospective findings from the Whitehall II study“,Nature Scientific Report,Vol.7,2017.