赤羽(Akabane)
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コロナ禍で個人・社会全体が「上手く立ち回る為の10の戦略」とは?
32名の専門家が集結して決定した「人類がコロナ禍で上手く立ち回る為の10の戦略」
2020年にWHO(世界保健機構)のメンバーが発表したレビュー研究(#1)では、32名の専門家がオンラインで集結して3日間話し合い、コロナ禍で皆が上手く立ち回る為の10の戦略を提唱してくれていました。
まずこの研究では、感染拡大が広がる現状に3つの問題点があるとしています。
解決すべき3つの問題点
- 継続的な対応: 未知の感染症でも、時間が経てば徐々に恐怖や不安が和らぐし、社会的距離は長期戦になるほど人々の心に「誰かと早く会いたい…」という気持ちを増幅させてしまう。結果として、個人ひいては社会全体で、対策に取り組む姿勢に緩みが出てしまうことがある。
- 目の前の状況がハッキリしない不確実性: 未知の感染症なので、状況や必要な対策もその都度模索し続けなければならない。規制はどうなっているのか?今後の感染拡大の見通しは?仕事や学業への影響は?…こうした情報がこまめに共有されないと、人は身近なソースを頼りに独自の解釈を生み出してしまい、結果カオスに陥る
- 独り善がりと差別: 未知の感染症を前に、人々の不安や恐怖が高まり、リスクになるモノや人を徹底的に避けたり排除するようになってしまう。その結果、過度な防衛反応として感染者を非難・差別したり、マスクを着けていない人を取り締まる「マスク警察」が現れるなど、人類の結束を邪魔することになる
どれも度々取り沙汰されている課題ですね。コロナを取り巻くヘイトは感染者への誹謗中傷や、大規模なものでは「Black Lives Matter」の運動にも表れています。不確実性についても、情報があやふやでデマや誤情報がネットで垂れ流しになっていて、かなりネットリテラシーが問われる現状です。
では上記の問題点をクリアするのに必要な戦略とは..?次にこの点を見ていきます。
効率的に立ち回る為の10の戦略
- 「新しい日常」に向けた段階的なアプローチを執る: 詳細で段階的なプロセスを決め、国民に分かり易いように示す。(例…赤・青・黄の三色で段階を表す) 最悪の状況を想定して、予防線を張っておいたり緩和策を練っておく
- 個人の権利と社会の利益のバランスを上手くとる: まず、人類学者や歴史学者、社会科学者などの専門家の意見に耳を傾け、その国の価値観や背景情報を把握する。それらを踏まえて、今後執っていく対策や方針がコミュニティや各家庭、職場などにどんな影響を与えうるのか?をしっかり検証し、妥協点を見つける
- ネガティブな影響を多大に被る立場の人を優先的に支援する: 雇用や教育、食糧難、ヘルスケアなどの観点から、コロナの影響が深刻になる恐れがある人を優先的に支援する。ただし、こうした優先順位付けが、人々の間で独善や差別を生まないように慎重になる必要はある
- ヘルスケアや医療従事者に特別手当を贈る: ヘルスケアに従事する人たちに国をあげて感謝を表明する場を設けつつ、金銭や待遇面でも何等かの形で支援をする。労力を少しでも減らすため、在宅勤務でもできる仕事は可能な限りそうする
- 互いに信頼関係を築き、強化し、維持する: 国家と国民の間で信頼関係を保つために、絶えずメディアを通じた情報の共有を行い、定期的に国民の声を拾って取り上げる。国民への声明はレクチャーっぽくならないように、国民一人一人の協力を喚起するような口調で発表する
- 今ある社会の規範を積極的に守りつつ、新しい健全な規範を作り上げていく: 小さなコミュニティや自治体のリーダーも対策に携われるようにし、上流から下流までの連携を深めたり、少数派のグループなどにも認識の共有ができるように、インフルエンサーを起用して国家としての方針を浸透させていくこともできる
- レジリエンスや自己効力感を高める: 他人との関わりが希薄になりがちな状況で、ストレス対策やメンタルケアなどの効果的な方法を発信し続けたり、問題を抱えている人をサポートする組織や団体があればそれを支援する。また、社会的サポートが受けられない立場の人や、健康面に不安がある人など、国民一人一人の事情をできるだけ汲み取る姿勢を保つ
- 明確でポジティブな言葉遣いを心がける: 論文など科学的なエビデンスに基づいた情報を重視したり、「人類 vs.コロナの戦い」「医療最前線」といった戦争を想起させるような言葉を避け、独善を生まないようなポジティブな言葉を心がける
- 情報が間違って広まってしまうことを予め想定し、上手く対処する: デマや誤情報が拡散されやすい状況にあるということを国民一人一人に伝え続け、解釈に差が生まれないように他人とのコミュニケーションを積極的にとる
- メディアを最大限活用する: メディアの影響力を活かして、デマや誤情報の防止したり、信頼できる情報ソースになることができる。SNSから国民の反応や意見を拾うこともできる
こうして聞いてみると、大半がいまいち新鮮味に欠ける内容かもしれませんし、切迫した現状では実現が難しいというものも多数あるかと。一方で、個人的には「戦争をイメージさせる表現は避けましょう!」というのは新鮮な見解でした。「医療最前線」なんかはよくメディアでも使われていますし…。
この中で、私たちが個人で取り組めることと言えば、デマや誤情報に振り回されないようにネットリテラシーを高めつつ、コロナに対して過度に恐怖や不安を煽られないように「正しく恐れる」ことでしょうか。これが出来るだけでも、防衛反応として起こる独り善がりや差別も随分減るでしょうし、足の引っ張り合いよりも皆で協力する姿勢が強くなるのではないかと思います。
注意点・まとめ
今回の注意点としては、招集された専門家の大半が先進国の出身という点が挙げられます。つまり、上記の戦略に発展途上国の現状が上手く反映されていない可能性があるということです。ちなみに、日本人は一名招集されていました。
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
Habersaat, K.B., Betsch, C., Danchin, M. et al. Ten considerations for effectively managing the COVID-19 transition. Nat Hum Behav 4, 677–687 (2020). https://doi.org/10.1038/s41562-020-0906-x