赤羽(Akabane)
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【達成率を上げるポイントも】目標達成まで「やり抜く力」は脳科学的にも予測できることが判明
日本でも、年末年始には新年の抱負を述べる機会がありますが、こうした目標はいつの間にか忘れ去られ、気付いたら挫折して終わってしまうことが多々あります。
「今年こそは…!」と毎年息巻くのですが、どういうことか続かない。この記事では、そんな目標達成について面白いデータを見ていきます。
脳の構造を見れば三日坊主が分かる?
2020年に東大大学院特任研究員の細田氏らが発表した研究(#1)によると、MRIによる脳画像スキャンによって、人の「やり抜く力」はある程度予測できる!という話です。
この研究では、65名の大学生(20~28歳、女性29名)を対象に、「ハノイの塔」というパズルゲームを時間制限付きで解いてもらう実験を行っていまして、この結果を元に、まず彼らを①達成できたグループ(34名)、②達成できなかったグループ(31名)という具合に分類しました。
*ハノイの塔…複数ある色々なサイズの円盤を積んでいくゲーム。サイズの大きい円盤が下から順に一箇所に積み上がるようにすれば完成。
そして、実験の前には参加者らの脳をMRIで画像スキャンし、①と②では脳の構造にどんな違いがあるのか?という点をチェックしていったようです。
すると実験の結果、以下のようなことがわかりました。
- ①の参加者では平均29.4分でゲームを完成させたのに対し、②の参加者では平均14.3分でゲームの完成を諦めた
- ①の参加者では、②よりも大脳の左前頭極の灰白質体積が有意に多く、白質の神経線維束の繋がりもより広範囲にわたっていた
- ゲームを制限時間内に完遂するかどうか?は左前頭極の構造で80~90%の確率で予測できた(右前頭極は偶然とあまり変わらない予測率だった)
*前頭極…大脳の最前部にあり、未来のことを計画する機能やメタ認知などに関係しているとされるが、詳しいことがまだ良くわかっていない領域。
まとめると、大脳の左前頭極の構造の違いによって、ゲームを「やり抜く力」が高い確率で見極められた!と。これは面白い結果ですね。
ちなみに、②のグループが途中で匙を投げた理由としては、「思ったより難しかった(28名)」「疲れた(3名)」という感じだったみたい。この辺の粘り強さは、ビッグ5でいう「誠実性(勤勉性)」や、心理学で定番の「GRIT(グリット)」みたいな性質と深く関係していそうです。
また、この研究では別の実験も行っていまして、別の参加者を対象に、英語学習や指を使った細かい運動タスクをそれぞれ1ヵ月間、毎日1時間ずつ続けてもらうという内容でした。そしてこれらの実験からも、ハノイの塔実験と同様の結果が示されました。
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「やり抜く力 GRIT(グリット)」は人生の成功にあまり効果がない上にアレと中身が丸被りでは?という反駁のメタ分析
「やり抜く力」が弱い人はどうすればいいの?
では「やり抜く力」が弱い人はどうすればいいのでしょう?この実験の白眉は、まさにこうした疑問まで検証を行っている点でして、結論は以下の通りです。
-
目標達成までのルートを細分化して、小さなゴールを設定すべし!
例えば、「痩せたい!」というシンプルな目標があったとして、この場合の小さなゴールは「毎朝運動を10分する」「間食にはお菓子の代わりに無塩ナッツを食べる」みたいな感じでしょうか。目標までにやるべきことが明確だと、実行にも移しやすいですし、何より先が見えるのでモチベーション維持もしやすくなりますね。
現に、今回行われた実験では、「やり抜く力」が弱いと分かった人でも、上記の戦略を駆使することで目標達成率がアップ&左前頭極の可塑的変化が見られたようです。
*脳の可塑性…脳が内的&外的な刺激によって神経回路の繋がりを強化する働きの事で、このメカニズムが脳の学習機能(上達、慣れ)に関係している
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- サンプルサイズは小さい: MRI自体が高価なため、サンプルも少なくなってしまう。その分、統計的なパワーは弱い
- サンプルは全て大学生から選出された: より若い層や高齢者層など、他の年齢層にどこまで適用できる結果なのかは分からない
- 因果関係は特定できない: 例えば、前頭極を擁する前頭前皮質前部の機能を阻害することで、目標を達成できない人が増えるか?という仮説を検証できれば、【前頭極→目標達成】という因果関係が実証されるが、この研究ではその類の検証はされていない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 目標達成まで「やり抜く力」は脳の前頭極の構造によってある程度予測できることが判明
- 実験で課されたタスクをやり遂げられる人とそうでない人では、脳の左前頭極の灰白質の体積や神経線維束の繋がりに違いが見られ、この違いから80~90%の確率で両者を予測することができた
- こうした予測は、パズルゲームから第二言語の学習、運動の学習まであらゆるジャンルで一貫して確認された
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Hosoda, C., Tsujimoto, S., Tatekawa, M. et al. Plastic frontal pole cortex structure related to individual persistence for goal achievement. Commun Biol 3, 194 (2020). https://doi.org/10.1038/s42003-020-0930-4