赤羽(Akabane)
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認知行動療法を超える?「メタ認知療法」の驚きの効果は..
まずはメタ認知って何?というところだけおさらいしておきましょう。
メタ認知とは?
メタ認知はよく「思考を思考すること」だと言われます。これをイラストイメージで表すとこんな感じでしょうか。
某アニメのキャラクターよろしく「もう一人のボク」的な視点から、自分自身の考えていること自体を思考する、と。これによって、自分のことを客観的に見れたり、感情や思考の流れを把握して冷静になれたり、あらゆるメリットが見込めるんですね。
でこのメタ認知を習慣づけるのによく言われるのが、「自分に問いかける癖をつけること」です。一番シンプルな問いだと、
- 今自分は何を考えているんだろうか?
といった感じ。わざわざこんなことをする理由は、自問することで、今の自分の思考を観察するように意識を向けられるからです。
では次に、このメタ認知を取り入れた治療法の効能について信頼性の高いデータを見ていきましょう。
メタ認知療法の驚くべき効果とは?
これは2018年にコペンハーゲン大学が発表したメタ分析(#1)で、25件の研究(うち15件はRCT)から780名を対象にメタ認知療法の効果についてまとめたもの。
RCTでは実験デザイン上、2つ以上のグループを設けて結果を比較しますが、具体的には①vs. 他のメンタル療法、②vs. 何もしないグループという感じでした。治療の回数は期間中に平均で9.5回(6〜14回)、一回につき45〜120分だった模様。
ちなみに今回含まれた症状は、うつ病が8件で最多、次点で5件が全般性不安障害、3件がPTSDといったラインナップです。
そして全体をまとめた結果、次のようなことが分かりました。
- 実験前後で比べると、大きな効果が見られた(g = 1.72, 95% CI [1.44–2.00], p
- 他のメンタル療法と比べても、効果は中〜大ほど見られた(g = 0.68, 95% CI [0.41–0.95])
- 何もしないグループと比べると、大きな効果が見られた(g = 2.06, 95% CI [1.52–2.60])
ここから言えるのは、メタ認知療法はあらゆるメンタルの問題を解決するのに高い効果がありそうだ、ということ。しかもその効果はあの認知行動療法と比べても引けを取らず、むしろ高い効果が報告されていたり。認知行動療法はメンタルの問題解決に非常に安定した効果が確認されているので、これはすごいことです。
そして中でも、うつや不安、メタ認知の機能不全の診断スコアが大きく改善していたことがわかっています。
注意点・まとめ
ただし注意点も幾つかあって、
- 対象者は大人が大半:1件だけ子供や青年を対象にしていて、残りは全て成人以上。今回の結果は成人向けだと捉えたほうが良さそう。
- 効果量が細かく調整できてない:効果量は上で登場した「g=〇〇」の数値で、そのまま効果の大きさを表している。これが細かい調整をされていないので、全体的に効果がインフレしている可能性もある。
- 内集団バイアスが働いているかも:これは、各研究を主導した研究チームが「メタ認知療法」を支持する立場にあったから、結果がポジティブな方に傾いているかもしれないということ。幾つかこの傾向が確認されたようで、上の効果量の問題と併せて結果がインフレしている可能性に繋がる。
この辺りは押さえておくとよろしいかと思います。以上も踏まえて今回の結果をまとめると、
- ネガティブ感情に遭遇した時に上手に対処できるようになるための「メタ認知療法」
- うつ病や不安症をはじめあらゆるメンタルの問題に効果が見込めそうだ
- 場合によっては認知行動療法を超える効果を発揮するかも
こんな感じでしょうか。効果の大きさこそまだ修正がありそうなものの、メタ認知療法もメンタルの治療法としてかなり期待できそうですね。
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Nicoline Normann and Nexhmedin Morina. The Efficacy of Metacognitive Therapy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Front Psychol. 2018; 9: 2211.