世界各地で行われている「いじめ対策プログラム」にはどのくらいの効果があるのか?

世界各地で行われている「いじめ対策プログラム」にはどのくらいの効果があるのか?

赤羽(Akabane)

今回は「世界で行われているいじめ対策って本当に効いているの?」というお話です。

世界各地で行われている「いじめ対策プログラム」にはどのくらいの効果があるのか?

世界各国で使われているいじめ対策プログラムの効果を総まとめしたメタ分析の結果…

2019年にケンブリッジ大学が発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)によると、世界各国で行われている「いじめ対策」は軒並みいじめを減らすのに効果的であり、それぞれ特化する分野が分かれている!ということが分かりました。

この研究では、3つの地域・主に12カ国から4つのいじめ対策プログラムに着目していまして、計100件の過去研究の結果をまとめています。中身の概要をザッと以下にまとめます。

  • 45件がRCT 、44件が比較なしの実験、14件がコホート調査
  • 研究の舞台となった主要な12カ国は、オーストラリア, カナダ, キプロス, フィンランド, ドイツ, ギリシャ, イタリア, オランダ, ノルウェー, スペイン, イギリス, アメリカ
  • 複数の研究で効果が検証されていたいじめ対策プログラムは、「KiVa」(16件)、「OBPP」(12件)、「NoTrap!」(4件)、「ViSC」(5件)、の4つ
  • メタ分析では、比較実験の結果からいじめ対策を講じたグループ、そうでないグループでいじめの発生件数などを比べ、オッズ比でその効果を算出

*KiVaはフィンランド、OBPPはノルウェーのダン・オルヴェウス氏が提唱、NoTrap!はイタリア、ViSCはオーストリア発祥のプログラム

こうしてみると、科学的な検証がなされるほど浸透しているいじめ対策プログラムは、どれもヨーロッパ発祥のものばかりです。また、日本の研究が一つもヒットしなかったということで、日本はいじめ対策でも遅れを取っているのでは?と感じさせられました。

果たして、上記の分析結果をまとめると以下のようなことが分かりました。

結果
  • 全体的にいじめ対策プログラムにはいじめの加害・被害ケースの両方を減らす効果が確認された
  • プログラムによって、いじめの加害者ケースは19~20%、被害者ケースは15~16%ほど減少した
  • ただし結果には大きなばらつきが見られた。この要因を突き止める分析によると、複数の研究の舞台となった国だけを含めた場合、イタリアで最も高い効果が確認されており、次いでスペイン、ノルウェー、アメリカ、フィンランドとなっていた

まず、世界各地のいじめ対策プログラムには一定の効果があることが認められまして、パーセント換算でいじめのケースは15~20%くらいの減少を見せることが判明。ただし結果には大きなばらつきが見られ、細かい分析によると国によって効果の大きさがかなり違っていたみたい。つまり、舞台となる国と使われるプログラムの組み合わせによって大きな差が生まれていたと。

ではプログラム毎にどんな問題に特化しているのでしょう?この点も調べてくれていまして、結果はこんな感じでした。

  • いじめの加害ケース…OBPPが最も効果的。次いでNoTrap!、KiVaという順番。BPYSでは効果は確認されず、一部有意ではないものの逆効果が見られた
  • いじめの被害ケース…NoTrap!が最も効果的。次いでBPYS、OBPP、KiVaという順番

この結果をくみ取ると、「NoTrap!」「OBPP」辺りが安定して高い効果を発揮しているのがわかります。加害ケースに対して、OBPPは26%ほどの減少をもたらし、一方で被害ケースに対して、NoTrap!は37%ほどの減少をもたらすレベルでした。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • プログラムの違いだけではバラつきを説明しきれない: 例えば、他にも対象とする子どもの年齢や効果の測定方法によっても効果が変わることが分かっているが、この辺りの更に細かい分析まではできていない
  • 日本の研究は含まれていない: その国や文化によって、同じプログラムでも期待できる効果は変わってくるので、上記のプログラムが日本でどのくらいの成果をあげられるかはわからない

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 世界各国で行われている「いじめ対策」は軒並みいじめを減らすのに効果的であり、プログラムによってそれぞれ特化する分野が分かれていることが分かった
  • いじめ対策プログラムとして多くの研究で題材にされていたのは、主に「KiVa」「OBPP」「NoTrap!」「ViSC」といったヨーロッパ発祥のものだった
  • 加害ケースに対してはOBPPが最も効果的であり、26%ほどの減少をもたらした。一方で被害ケースに対してはNoTrap!が最適であり、37%ほどの減少をもたらすレベルだった

赤羽(Akabane)

今回の研究は、世界各地のいじめ対策が軒並み効果的であるというエビデンスになると同時に、国や地域ごとの「いじめを無くそう!」という姿勢にも温度差があることを示唆しているといえます。やはり、いじめは場当たり的に対処するのではなく、まず体系化されたプログラムを駆使して対処するべきだなあと思いました。

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参考文献&引用

#1 Gaffney, H., Farrington, D.P. & Ttofi, M.M. Examining the Effectiveness of School-Bullying Intervention Programs Globally: a Meta-analysis. Int Journal of Bullying Prevention 1, 14–31 (2019). https://doi.org/10.1007/s42380-019-0007-4