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うつ病の治療に最強の代替療法はアレとアレだ!話題の漢方薬や鍼治療の効果は実証されているの?
今回は「うつ病を治すのをベストな代替治療のアプローチはどれ?」というお話です。
早速ですが、この問題についてまとまったデータが出ていたので、中身を覗いてみましょう。
30種類のうつ病の代替療法を総まとめ!現時点で効果が認められている治療法は?
これは2019年にデュースブルク=エッセン大学が発表したアンブレラレビュー(#1)で、2002~2018年の間に出版された26件のメタ分析を総レビューした超大作です。
テーマは【うつ病の治療に最適な代替療法】で、うつ症状レベルの改善や治療後の反応、完治率、再発率、副作用など全部をひっくるめて効果的な方法を見ていきました。「代替療法」と言ってますが、ここでは抗うつ剤の代替療法、という解釈になります。
この研究では、研究の統計手法で最高峰とも言われる「メタ分析」を更に厳しく評価していて、そのガイドラインをある程度クリアしたものでないとOKサインを出していません。その分、より慎重な結果だと捉えてよいかと思います。
そしてこの厳しい評価の結果、まず結論として次のようなことが分かりました。
- セントジョーンズワートは、抗うつ剤に匹敵するレベルで軽度~中度のうつ病患者のうつ症状を改善した
- マインドフルネスベースドの認知行動治療法は、抗うつ剤よりもうつ病の再発予防に効果的だった
- 上記2つは多くのメタ分析で検証されていて、一定の効果が認められている
やはり割と定番のアプローチが浮上してきますね。ハーブ系なら「セントジョーンズワート」で、認知療法ならマインドフルネスと認知行動療法を組み合わせた「マインドフルネスベースド認知行動療法」あたり。どちらもメタ分析まで研究が進んでいるお馴染みの代替案です。
では他の代替療法はどんな感じだったんでしょうか?こちらもザッと結果をみてみましょう。
- 鍼治療:まとまったデータがあって、一応効果が報告されている。ただ出版バイアスなど手法に問題があったり、結果にかなりばらつきが見られた。
- 電気鍼治療:上に同じく。
- サフラン:まとまったデータがあって、短期間で一定の効果が報告されている。ただ含まれた研究が同じ研究者から発表されている分、データの信憑性は落ちる。
- クルクミン:まとまったデータがあって、短期間で一定の効果が報告されている。ただ出版バイアスなど手法に問題がある。
- 漢方薬:まとまったデータがあって、効果も報告されている。ただ出版バイアスなど問題が盛りだくさんで結果の信憑性が低い。
- その他ハーブ:まとまったデータなし。ラベンダーやロディオラ・ロゼアで一部単体の研究で効果が報告されてはいる。
- ダンス療法:まとまったデータがあって、一定の効果が報告されている。ただ全体のサンプル数が少なかったり、バイアスの可能性が否定できない。
- 気功・太極拳:まとまったデータがあって、短期間で効果が報告されている。ただ出版バイアスの可能性があったり、結果にばらつきが見られたり問題が多い。
- ヨガ:まとまったデータがあって、短期間で効果が報告されている。ただ出版バイアスの可能性があったり、結果にばらつきが見られたり問題が多い。
- マインドフルネスストレス低減法:まとまったデータがあって、短期間で効果が報告されている。ただデータの選別段階でバイアスの可能性があったり、結果にばらつきが見られたり問題が多い。
- イノシトール:まとまったデータがあるが、研究数が少ない
- マグネシウム:まとまったデータなし
- オメガ3脂肪酸:まとまったデータがあるが、症状の改善に効果が見られる一方で一部完治などには効果なしとも。結果にばらつきが大きかったり、出版バイアスの可能性もある。
- プロバイオティクス:まとまったデータがあって、一部短期間での効果が報告されている。ただ研究数が少なくて結果のバラつきが大きい。
- S-アデノシルメチオニン(SAMe):まとまったデータがあるが、効果が見られたり見られなかったり、出版バイアスの可能性もある。
- トリプトファン:まとまったデータがあるが、研究数が少なかったり、出版バイアスや結果のバラつきも見られる。
- ビタミン類:葉酸サプリやビタミンB群サプリ、ビタミンDなどでまとまったデータ&効果が報告されている。ただ結果にばらつきが大きかったり、出版バイアスの可能性がある。
- 亜鉛:まとまったデータがあって、抗うつ剤とセットで摂った時など一定の効果が確認されている。ただバイアスの検証をしていなかったり、副作用の確認もなかった様子。
- 催眠術:まとまったデータなし
- ホメオパシー:まとまったデータなし
- 光線療法:まとまったデータがあって、症状の改善に効果が報告されている。ただ結果にばらつきが大きかったり、バイアスの可能性が否定できない。
- マッサージ療法:まとまったデータなし
- 音楽療法:まとまったデータがあって、短~長期間で効果が報告されている。ただデータの選別の段階でバイアスの可能性があったり、期間で結果にばらつきが出たりしている。
- 栄養療法:まとまったデータなし
- 宗教・スピリチュアル:まとまったデータなし
- アロマセラピー:まとまったデータなし
- バイオフィードバック:まとまったデータなし
データの解釈の仕方としては、「まとまったデータが出ている」&「ある程度効果が確認されている」ものは、うつ病治療に使える可能性が見込めるでしょう。そうでないものについては、現段階では使えないシロモノかと思います。
中には過去に「効果が見込めるかも..」と当サイトで紹介したものもありますが、メタ分析をさらに厳しく評価するとまだまだGOサインは出ないみたい。(*出版バイアス..何かの効果を否定する研究結果は公表されにくく、都合の良いデータばかり出版されがちな 偏りを意味する)
ただ個人的には、「サフラン」は使えるんでは?と思いました。何故なら、ここではサフランに関して1件のメタ分析しかエントリーしてないんですが、実際は2017~2019年でもっとメタ分析が出ているから。これらも含めれば、信憑性は結構上がると思います。
注意点・まとめ
今回の研究の注意点は、ザッと次のようなポイントです。
- 対象者が大人のみだった:子どもにも同じ効果が適用されるかはわからない
- 今回対象になった患者には色々なタイプが居た:大うつ病性障害から季節性うつ病まで色々で、程度にも軽度~中度まで違いがあった
- 大半の研究は短期間だった:7件以外のメタ分析は12週間以内の研究しか含んでいない
では以上を踏まえて、最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- うつ病の代替療法として一定の効果が認められているのは「セントジョーンズワート」「マインドフルネスベースド認知行動療法」の2つ
- 他のハーブ、サプリ、瞑想ムーブメント、鍼治療といった代替療法は現時点でエビデンスが少ない or 弱い
- 個人的にはサフランも認められていいんでは?と思っている
こんな感じでしょうか。エビデンスが少なかったり安全性が確認されていないものはまだ検証が必要ですが、認知行動療法やマインドフルネス療法あたりはもっと広まってもいいのかな?と思います。
セントジョーンズワートについては、SSRIなど抗うつ剤よりも副作用が少なくて安全性はかなり高いほうですが、他の医薬品と競合することがあります。服用の際はかかりつけ医に相談の上、飲むことをお勧めします。
赤羽(Akabane)
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#1 Haller H, Anheyer D, Cramer H, Dobos G. Complementary therapies for clinical depression: an overview of systematic reviews. BMJ Open. 2019 Aug 5;9(8):e028527.