【感染症予防】マルチビタミンやミネラルのサプリで免疫システムは改善するのか？

赤羽(Akabane)

今回は「マルチビタミンやミネラルのサプリで免疫機能は善くなるのか？」というお話です。

【感染症予防】マルチビタミンやミネラルのサプリで免疫システムは改善するのか？

新型コロナウイルスの蔓延に伴って、より一層免疫力への健康意識が高まってきています。

そうなると、当然注目されるのが抗酸化作用のあるビタミン系(A,C,E)やミネラルのサプリメントになるわけですが、果たして免疫機能を高める効果はあるのでしょうか？

マルチビタミン&ミネラルのサプリで免疫は善くならなかったが、他にメリットがあるかも

2020年にオレゴン州立大学の研究機関が発表したRCT(#1)によると、マルチビタミン&ミネラルサプリで免疫機能の改善は見られなかったが、主観的な健康度は高まるかも？ということが分かりました。

この研究では、42名の高齢者(55~75歳)を対象に比較実験を行っていまして、実験期間12週間で彼らを以下の2つのグループに無作為に分けたようです。

サプリグループ: マルチビタミンとミネラルが同時に含まれたサプリ「Redoxon® VI」を期間中毎日1錠飲み続ける
プラセボグループ: サプリグループと同量・同頻度で効果のない偽のサプリを飲む

*Redoxon® VIには、ビタミンA,C,D,E,B6,B9,B12,鉄,銅,亜鉛,セレンなどが含まれた

実験前後には唾液や血液サンプルを採取し、免疫のコンディションや血中のビタミンC,D,亜鉛濃度をチェック、実験中は各自で健康や疾病に関する日記をつけてもらっていました。

果たして実験の結果は、以下のようになりました。

結果

サプリグループで、血中のビタミンCが126%、亜鉛が43%増加していた(ビタミンD濃度は変化なし)
好中球の食作用や超酸化物の産生、菌の生き残り具合といった免疫システムのコンディション指標にはグループ間で有意な差はなかった
唾液中の免疫グロブリンAレベルはサプリグループで有意に減少していたが、実験終了時のレベルは両グループで同じくらいだった。炎症性サイトカインレベルには両グループで有意な変化はなかった

これをどう捉えるかは人それぞれですが、個人的には「…微妙じゃない？」という印象です。ビタミンやミネラルのサプリを3ヵ月ほど飲めば血中の濃度が上がるのは自然ですし、それに伴って免疫の機能は大して善くなっていないのであれば、効果はあまり見込めないのでは？と思ってしまいます。

ただ一方で、日記の方ではよい結果が出ていまして、病気がちな日数がサプリグループでプラセボよりも70%ちかく減っていたことが分かりました。また、病気がちだと感じる場合も、サプリグループではその重症度は軽いケースに留まることが多かったとも。数値には現れませんでしたが、主観的な健康度は善くなっていました。

注意点・まとめ

注意点も幾つかありまして、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意

サンプルサイズは小さい: 参加者が少ない分、統計的なパワーは弱くなる
実験期間はやや短い: 全体で3ヵ月までの短期間なので、半年や年単位での効果までは分からない
サンプルは限定的: 参加者は一部地域で募った高齢者のみ。他の年齢層や人種・文化圏でどこまで一般化できる内容かは分からない

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント

高齢者を対象にした12週間の実験で、マルチビタミン&ミネラルサプリを飲み続けたグループでは、血中のビタミンC・亜鉛の濃度は高まった(ビタミンD濃度には有意な変化なし)
病気がちな日数や病気の症状レベルも減少・緩和した。一方で、免疫システムのコンディションには大した効果がなかった
肝心な免疫に関する数値が改善されず、主観的な健康レベルの改善にとどまっている点で、マルチビタミン&ミネラルのサプリは免疫力アップの目的では飲む必要はなさそうだ

赤羽(Akabane)

個人的には、マルチビタミンのサプリはあまりお勧めできません。というのも、過去のまとまった見解で「抗酸化ビタミンサプリは慢性疾患リスクなどへの効果は見込めない！」と出ていますし、むしろ死亡リスクを高めるかもしれないとの指摘もあるからです。