赤羽(Akabane)
目次
完璧主義に囚われて脆くなったメンタルはセルフコンパッションでカバーできるかも?
セルフコンパッションや完璧主義については、予備知識として以下をご覧ください。
【8つのエクササイズ】その道のスペシャリストに聞く!「セルフコンパッション」の鍛え方とは?「完璧主義」はメンタルを激しく病んで”死”に至る危険な思想である。
完璧主義とうつ症状の相関は高いセルフコンパッションで相殺できるかも?という調査結果
2018年にオーストラリアン・カソリック大学が発表した研究(#1)によると、完璧主義に囚われて脆くなったメンタルはセルフコンパッションでカバーできるかもしれないことが分かりました。
この研究では2つの実験を行なっていまして、合計1,056名を対象にデータを集めていました。テーマは一貫していて、参加者のアンケート回答結果から、完璧主義度とメンタルの調子の相関をチェックして、そこにセルフコンパッションレベルを混ぜたらどうなるのか?という感じです。セルフコンパッション診断には「SCS」を使ったようです。
実験1では平均14歳前後の未成年を対象に、実験2では平均25歳前後の成人を対象にオンライン調査を行っていて、若者世代は大体カバーできているなという印象です。
果たして結果を見てみると、以下のようなことがわかりました。
- 完璧主義度とうつ症状レベルには強い相関が見られた
- セルフコンパッション度が高いと、この相関が弱まる傾向があった
- この傾向は性別や年齢の差によって変わらず、一貫して確認された
まとめると、子供から成人した若者まで、幅広い年齢層でセルフコンパッションが完璧主義とうつ症状の関係を弱めるかもしれないことがわかったんですね。若者中心ではありますが、結果は一貫していました。
とはいえ、いくらセルフコンパッションが高くても、依然として完璧主義とうつ症状の間の相関は僅かにあったようです。統計としては”有意差”であったものの、セルフコンパッションだけでは完璧主義とうつ症状の間の相関の2%くらいしか説明できなかったようです。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ざっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 因果関係を裏付ける結果ではない: RCTなどの因果関係を導く実験手法ではなく、複数のデータの相関関係を明らかにしているだけ
- 高齢層のサンプルはかなり少ない: 74歳までの成人が含まれたが、大多数は若い層に参加者が集中している
- 参加者は一般から募られ、精神疾患を抱えた人などが居たかどうかは不明: あくまで一般から募った人を対象にうつ症状度の調査をしただけなので、実際に精神疾患を抱える人でどうなるか?はわからない
高齢者のサンプルが少なかったのは、おそらくオンラインでの匿名アンケート調査という形を取っていたからだと思われます。(若者の方がネットに詳しく調査までたどり着きやすい)
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 完璧主義に囚われて脆くなったメンタルはセルフコンパッションでカバーできるかもしれない
- 未成年〜若い成人のデータを中心に集めた調査結果によると、年齢層や性別に関係なく完璧主義とうつ症状に強い相関関係が見られ、同時にセルフコンパッション度が高ければこの相関が弱まることがわかった
- ただし、実際には完璧主義とうつ症状の相関のうち、セルフコンパッションで説明がつく割合はたった2%程度だった(他にもたくさんの要素が影響を与えていて、もっと重要な割合を占める何かがある可能性が高い)
赤羽(Akabane)
関連記事はこちらもどうぞ
【8つのエクササイズ】その道のスペシャリストに聞く!「セルフコンパッション」の鍛え方とは?【論文研究】たった2週間のセルフコンパッショントレーニングで自己肯定感がアップ、不安やうつ症状まで改善した?!セルフコンパッションで若者のメンタルヘルスは健全になるのか?あなたは自分に優しい?論文研究で一番使われているセルフコンパッション診断テスト「SCS 26問」をやってみよう参考文献&引用
#1 Ferrari M, Yap K, Scott N, Einstein DA, Ciarrochi J. Self-compassion moderates the perfectionism and depression link in both adolescence and adulthood. PLoS One. 2018 Feb 21;13(2):e0192022. doi: 10.1371/journal.pone.0192022. PMID: 29466452; PMCID: PMC5821438.