デタラメな情報に惑わされるな!専門家がまとめたネットに蔓延る【20の睡眠にまつわる神話】

デタラメな情報に惑わされるな!専門家がまとめたネットに蔓延る【20の睡眠にまつわる神話】

赤羽(Akabane)

今回は「睡眠にまつわる神話」についてのお話です。

目次

デタラメな情報に惑わされるな!専門家がまとめたネットに蔓延る【20の睡眠にまつわる神話】

睡眠に関しては昔から色々な説が浮かんでは消え…という感じでしたが、この度、睡眠のエキスパートたちが睡眠にまつわる説の中で「これは神話ですよ」というものを幾つか並べてくれていました。

早速本題を見ていきましょう。

睡眠の専門家が集まって精査した「睡眠にまつわる神話20選」

出典は2019年にニューヨーク大学医学部が発表した研究(#1)で、10名の睡眠の専門家たちが集まって、8000以上のウェブサイトを精査したレビューです。

そこから、睡眠にまつわるよくある説を審議して、最終的に「これは科学的な根拠がありません」という神話を【間違い度(%)】付きで以下のように20個ピックアップしていました。

睡眠中、脳は活動していない(間違い度:100%)

これに関しては今更説明する必要もなさそうですね(笑) REM睡眠中のニューロンの発火など、例を挙げればキリがありません。


いつでもどこでも眠れる、というのは健康な睡眠のサインである(間違い度:95%)

これはどちらかと言えば、体が昨晩から十分な休息を取れていない証拠です。慢性的な睡眠不足の可能性もあって、ドラえもんののび太君みたいにいつでもどこでも眠れるのは健康とは限らないみたい。


成人の多くは健康の為に5時間睡眠以下で十分である(間違い度:93%)

これも最早説明の必要はなさそうです。成人していれば、個人差はあれど一般的には「7時間」の睡眠時間が必要!というのは国立睡眠財団の見解(#2)からも明らかです。


睡眠時間が削られても脳や体は機能するように慣れる(間違い度:93%)

睡眠が削られたら体は適応する!という根拠は見当たらないようです。当然睡眠が短くなれば日中は起きているのが辛くなりますし、体の中でも睡眠不足に伴って代謝系を中心に悪影響が出始めます。


一日のうち何時に寝ようと健康には影響しない(間違い度:93%)

睡眠は質や量と同じくらいリズムが大事!というのは定説になりつつあります。一定のリズムが崩れると、やはり代謝系に悪影響が出ますし、実際にメタ分析(#3)でも夜勤シフトは糖尿病発症リスクと相関が確認されています。


目を瞑ってベッドに寝転がっているだけでも、睡眠と同じくらい効果がある(間違い度:93%)

これは意外とよく聞く説ですが、睡眠中とただ目を瞑っているだけでは、REM睡眠があるかないか?など歴然とした違いがあります。


眠れなければ、ベッドの中で寝つけるまでこらえるべし(間違い度:93%)

これは有名な快眠テクニック「刺激制限療法」のルールに反します。とにかくベッドを「眠る為の場所」と脳に認識させるのが重要なので、眠れないと分かったらすぐにベッドから出ましょう。


いびきは害はないので問題なし(間違い度:85%)

いびきは睡眠時無呼吸症候群と関係していたり、心疾患系イベントのリスクも高めます。同じ寝室で眠る人にだけでなく、自分自身にも悪影響があります。


寝酒は睡眠の質を善くする(間違い度:83%)

寝酒で快眠できた!という経験がある方は多いんではないかと思います。ただ、科学的に見るとそれは主観に過ぎないようですが。

実際の研究(#4)でも、アルコールは睡眠中の心拍変動(HRV)を低下させたり、自律神経に悪影響を与えて体の回復を邪魔することが分かっています。


大人は年を取るごとに睡眠時間が増える(間違い度:83%)

実のところ、お年寄りほど若者よりも睡眠時間が短くなる傾向があるようです。感覚的には高齢になるほど疲れが抜けにくくなったり、もっと睡眠が必要そうなイメージがありますが、原因はよくわかっていません。


寝室は涼しいよりも暖かいほうがいい(間違い度:78%)

最適な寝室の温度は摂氏18~20℃くらいと言われていて、冬だからと暖房を効かせ過ぎるとかえって睡眠の質が落ちてしまうので注意です。


眠りが深い人は就寝中にほとんど動かない(間違い度:78%)

睡眠中に寝がえりを打ったりするのは普通のことで、寝がえり自体は睡眠の質よりも体の運動機能などに依ります。つまり、年齢などの影響の方が就寝中に動く度合いに影響するということですね。


良く寝ていても、退屈は眠気を誘う(間違い度:75%)

これに関しては、個人的には一概に間違いとは決めつけられないんではないかと思っています。

専門家らによると、退屈が基になって眠気が現れることはあるかもしれないものの、退屈単体は眠気の原因にならないとしています。ただ、マウス実験の段階ではあるものの、脳の側坐核で退屈と眠気の制御がされていると報告する研究(#5)もあるので、これは「間違いである」とバッサリ断言するにはまだ早いのかなと。


アラームが鳴ってすぐ起きるよりもスヌーズ機能を使ったほうが良い(間違い度:75%)

二度寝は主観的にはすごい気持ちいいものですが、実際はさにあらず。一度アラームで起きてから再びスヌーズ機能を使って二度寝するのは質的に見ても良くありません。

途中で睡眠が邪魔されると、その後二度寝したとしても質の高い睡眠にはならないので、アラームが鳴ったら一度目でベッドから飛び起きたほうが良さそうです。


夢を覚えているのはいい睡眠の証拠である(間違い度:73%)

夢を覚えているということは、REM睡眠中に起きているということになるので、夜中に中途覚醒してしまっている可能性があります。これは質的にも良いことではないので、間違いと言えそう。


寝る前に寝床でTVを観ればリラックスできる(間違い度:70%)

むしろTVの光で睡眠リズムを司るホルモン「メラトニン」の分泌が抑えられたり、興奮してしまう原因になります。また、「ベッドは寝る場所」と脳がが認識しなくなる恐れもあるので、睡眠の前はメリハリが大事です。


寝る4時間前までに運動をすると睡眠の質が下がる(間違い度:65%)

これは間違いでしょう。具体的に言うと、寝る前1時間以内で激しいスプリントなどをすれば睡眠の質に悪影響が出ますが、程々の運動なら就寝前2時間でも影響しないことが最新のメタ分析(#6)でも判明しています。


出来る限りたくさん寝るのが良い(間違い度:65%)

これも間違いでしょう。メタ分析(#7)でも、睡眠不足より寝すぎの方が早死にリスクが高まったり心血管疾患リスクも増す!という報告が上がっています。


一日眠れなかったら、その健康への悪影響は長引く(間違い度:65%)

「一日眠れないと悪影響はその時点で溜まっていく..」これは正しいか間違いか?というよりは程度や健康指標の問題かと。

例えば、一日の睡眠不足だけでも食欲にまつわるホルモンは空腹の方向に増減するという研究(#8)があったり、一夜の睡眠不足で遺伝子レベルで代謝が崩れるという研究(#9)もあります。ただし、こうした反応はその後十分な睡眠を取れば巻き返せるというデータも多いので、その後によってはそんなに大きな問題にはならないんじゃないか?とも考えられるわけです。


眠れないなら、昼寝をすれば十分な睡眠を確保できる(間違い度:63%)

昼寝自体は程々であれば問題ないですが、夜に眠れなかった分を昼寝で補完しようとするのはよくありません。昼寝しすぎると当然夜は眠れなくなってしまうので、せいぜい10分くらいにしておきましょう。

まとめ

では最後に、上で挙げた20の神話を教訓にして良質な睡眠のために心がけたい5つのポイントで締めくくります。

良質な睡眠5つのポイント
  • 大人はひとまず7時間睡眠を心がける
  • 睡眠のリズムは毎日なるべく一定にする
  • 眠れないと感じたらすぐにベッドから出る
  • 寝床で「寝る」以外のことは一切しない
  • 寝酒やアラームのスヌーズ機能は使わない

こんな感じでしょうか。掘り下げればもっとありそうですが、一旦はこの辺りを試しておけば強力な効果があるかと思います。

赤羽(Akabane)

とはいえ夜勤の方や生活リズムを一定にするのが難しい!という方も居られると思います。その場合は、以下の「ナイトシフトルール」を参考にしてみるとよろしいかと思います。その他の関連記事も張っておきますので、ご参考までに。

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参考文献&引用

#1 Robbins R, Grandner MA, Buxton OM, et al. Sleep myths: an expert-led study to identify false beliefs about sleep that impinge upon population sleep health practices. Sleep Health. 2019 Aug;5(4):409-417.

#2 Hirshkowitz M, Whiton K, Albert SM, et al. National Sleep Foundation’s sleep time duration recommendations: methodology ands results summary. Sleep Health. 2015 Mar;1(1):40-43.

#3 Gan Y, Yang C, Tong X, et al. Shift work and diabetes mellitus: a meta-analysis of observational studies. Occup Environ Med. 2015 Jan;72(1):72-8.

#4 Sagawa,Y.(2011). Alcohol has a dose-related effect on parasympathetic nerve activity during sleep.. Alcoholism, Clinical & Experimental Research, 35(11): 2093-99.

#5 Yo Oishi, Qi Xu, Lu Wang, et al. Slow-wave sleep is controlled by a subset of nucleus accumbens core neurons in mice. Nature Communications, 2017; 8 (1).

#6 Stutz J, Eiholzer R, Spengler CM. Effects of Evening Exercise on Sleep in Healthy Participants: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2019 Feb;49(2):269-287.

#7 Jike M, Itani O, Watanabe N, et al. Long sleep duration and health outcomes: A Systematic Review, meta-analysis and meta-regression.. Sleep Med Rev. 2018 Jun;39:25-36.

#8 Shahrad Taheri,Ling Lin,Diane Austin, et al. Short Sleep Duration Is Associated with Reduced Leptin, Elevated Ghrelin, and Increased Body Mass Index. PLoS Med. 2004 Dec;1(3):e62.

#9 Cedernaes J, Schönke M, Westholm JO, et al. Acute sleep loss results in tissue-specific alterations in genome-wide DNA methylation state and metabolic fuel utilization in humans. Sci Adv. 2018 Aug 22;4(8):eaar8590.