【長期・短期】マインドフルネス瞑想が脳の感情を司る部位「偏桃体」にもたらす効果とは?

【長期・短期】マインドフルネス瞑想が脳の感情を司る部位「偏桃体」にもたらす効果とは?

赤羽(Akabane)

今回は「マインドフルネス瞑想の脳への影響」についてのお話です。

【長期・短期】マインドフルネス瞑想が脳の感情を司る部位「偏桃体」にもたらす効果とは?

マインドフルネスや瞑想と言えば、近年の注目テーマですが、我々の生活の質を高めたり、メンタルの調整への効果を裏付けるように、脳科学の見地からも沢山のデータが発表されています。

マインドフルネスや瞑想については以下をご覧いただくとして、この記事ではマインドフルネス瞑想が脳の感情に関わる「偏桃体」にどんな影響を与えるのか?というデータを見ていきます。
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マインドフルネス瞑想が脳の「偏桃体」にもたらす長期・短期的な効果とは?

2018年にウィスコンシン大学マディソン校が発表したRCT(#1)によると、マインドフルネス瞑想は長期的に偏桃体の活性を鎮めつつ、代わりに理性に関わる別の部位との繋がりを強めることが分かりました。

この研究では、マインドフルネス瞑想をテーマに、ザっと以下の2パターンの実験&調査を行っています。

  • 平均9,081時間もの瞑想経験を持つ30名の瞑想熟練者と、121名の瞑想初心者を対象に、以下の測定項目を比較する
  • 67名の瞑想初心者を対象に、彼らを①マインドフルネスストレス低減法を行うグループ(32名)、②健康促進グループ(35名)にランダムで振り分け、8週間を過ごしてもらう
  • 測定項目は、マインドフルネス度診断(FFMQ)、fMRIによる脳測定&感情制御タスク

*健康促進…マインドフルネスストレス低減法(MBSR)からマインドフルネスの要素を除いたセッションを行う
*感情制御タスク…ネガティヴ、ニュートラル、ポジティブに分類される72種類のイメージを見ていき、その反応をfMRIで測定していく

つまり、長期的なマインドフルネス瞑想の脳への影響を瞑想熟練者と初心者の比較から、短期的な影響を瞑想初心者の数週間のマインドフルネストレーニングの成果からチェックしています。

そして実験の結果は、こんな感じになりました。

結果
  • 長期的な結果として、瞑想熟練者たちの脳の右扁桃体の活動は、初心者よりも有意に抑えられていた(左扁桃体には有意な差はなし)
  • 瞑想熟練者の方がより多くのイメージを「ニュートラル」だと判断したが、この割合は扁桃体の活動の差とは関連が見られなかった
  • 短期的な結果として、瞑想初心者たちの8週間のマインドフルネスプログラムの結果は、両グループ間で左扁桃体の活動には有意な差は見られなかったが右扁桃体では差が見られた

まとめると、長期的なマインドフルネス瞑想の特訓によって、脳の扁桃体の活動が抑えられるかもよ?と。扁桃体とは、脳の感情を司る「クルミ」のような形状の部位でして、激しい感情にはこの部位の活性化が伴うことが分かっています。

また別の視点から見てみると、どうやらこんなことも分かったようです。

  • マインドフルネスの特性の一つ「心情の変化に対して過剰に反応しない」の項目が高い人ほど扁桃体の活動が抑えられており、瞑想熟練者の多くが当てはまっていた
  • 瞑想熟練者で、右扁桃体と前頭前野腹内側部(VMPFC)の有意な繋がりが確認された
  • 瞑想初心者の8週間のマインドフルネスプログラムで、比較グループよりも実験後の扁桃体-VMPFCの繋がりが有意に強く見られた

* VMPFC…感情の制御や理性を司る脳の部位

こうした結果も踏まえると、結果に多少バラつきはありますが、短期・長期の両方でマインドフルネス瞑想の特訓の効果があると言えそうです。

その影響は、扁桃体の活動を抑えることで感情の過剰な高まりや反応を鎮めつつ、一方でVMPFCとの繋がりを深めることで感情制御や理性を高める、といった多面的なものであると考えられます。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • 参加者の集め方: 実験の参加者はオンラインやチラシで集められた有志だったので、ポジティブな効果を期待するバイアスなどがかかっているかもしれない
  • どこまで一般化できるか問題: 実験はアメリカで行われていて、国や文化によってマインドフルネスや瞑想に対する意識も異なるので、こうした要素が結果に影響をもたらすかも

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • マインドフルネス瞑想の特訓で、脳の感情を司る部位「扁桃体」の活動を鎮め、一方で理性や感情制御を司る「VMPFC」との繋がりを深める効果が確認された
  • 瞑想歴の長い熟練者の脳波測定や、初心者を対象にした短期プログラムの結果を踏まえると、マインドフルネス瞑想によって、長期&短期の両方で脳の感情制御能力の向上が見込める
  • つまり、マインドフルネス瞑想の特訓を続けることで、脳科学的にも感情の制御が上手になるかもしれない!ということ

赤羽(Akabane)

上記のマインドフルネスの特性に関しては、過去にも紹介した「感情サーフィン」などのテクニックが役立つかと思います。興味のある方は以下の続きもどうぞ。

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参考文献&引用

#1 Kral TRA, Schuyler BS, Mumford JA, Rosenkranz MA, Lutz A, Davidson RJ. Impact of short- and long-term mindfulness meditation training on amygdala reactivity to emotional stimuli. Neuroimage. 2018;181:301‐313. doi:10.1016/j.neuroimage.2018.07.013